
みなさんこんにちは。
日本笑顔推進協会のライター浅井です。
突然ですが皆さんはしらたきと糸こんにゃくを同じものだと思いますか?大体同じです。
同様に笑顔と笑いは同じものだと思いますか?
このへん、なんだか凄く曖昧な感じがします。笑顔のことについて調べると、「笑い」のこともでてきて、効能や効果にいたってはきっぱり「笑顔」をつくるといいのか「声を出して笑う」といいのか、明確に区分けされていないことが多いようです。
それではこの両者の違いはなんなのでしょうか?
まずは辞書から調べてみましょう。
「笑顔」・・・にこにこと笑った顔、笑い顔。
「笑い」・・・笑うこと。またその声。えみ。
事実ベースです。ではもう少し掘り下げてみましょう。
笑顔には心からの楽しさ、嬉しさなどに起因する「自然な感情表現の笑顔」と
「愛想笑いや嘘をつくときの作り笑い」の笑顔があります。この2つの笑顔の詳しい記事はこちら。
一方笑いは、物理的に声が出る感情表現で、そこには「笑顔」が包括する意味合いと、さらに「面白い」「おかしい」「愉快」「あざける」といったような、意味も含まれます。
古語における違い
古語においてもその意味合いがよみとれます。「わらふ」と「ゑむ」は表現上区別されていました。
【笑ふ】は笑う、あざける、あざわらうという訳であり、
【笑む】はほほえむ、にっこりする、花が咲く、という訳です。
両方とも「笑」という漢字を当てているために、表現上の違いが不明確でしたが、「ははは」と声を出す「笑い」とにっこり微笑む「笑顔」は別物ですね。
また、作り笑いは別として自然な笑顔は「心地よい」「快」を根源としています。微笑む時、唇を“U”の字にする大頬骨筋は、乳児が母乳を吸い取る時に使う筋肉であるので、個体発生上の笑顔の起源は、母乳を吸った時の満足の表情であるとされるそうです。
(永井俊哉講義録 第160号より)
また笑顔の日本語「ほほえむ」は、「笑む(エム:笑う)」と「ほほ」が合成されてできました。「成熟する前に、つぼみのように膨らむ」ことを古語で「ホホマル」「ホホム」と言いました。この「ホホ」の部分が「ほほ」の部分になったという説があります。
外国語における違い
・laugh (声を立てて)笑う
・smile は声を立てないで顔の表情だけで笑う
・grin は smile よりは口を大きくあけ,歯を見せて声を立てずに顔だけが笑う
・chuckle は口をあけずに低い声で満足げに静かに笑う意で,独り笑いなどをする時にいう
・giggle は子供や若い女性などがくすくす笑う
意外と「笑う」に関して細分化された表現の確認ができました。
古英語期には smerian という単語があり、「声を出して笑う」方の意味で使われていました。中英語期に、古北欧語が起源と考えられるmyllen またsmile(n) が現れます。こちらの方がよく使われるようになり、つづりもsmile に統一されていったようです。
サルにおける違い
では人類の祖先サルにおいてはどうでしょうか。こんなデータがあります。
オランダの動物行動学者ヤン・ファン・ホーフ氏も、「笑い」に関してはしっかり2つに分類しています。
・ Laugh(発声を伴う笑い)
・ Smile(発声を伴わず、歯を見せて微笑む笑い)
これら2種の笑いの起源は異なり、もともとLaughは、霊長類が仲間同士で遊ぶ際に口を丸く開ける和みの表情(プレイ・フェイス)と、その時に発する声が進化したものだそうです。
一方、Smileは、Grimaceという歯茎むき出しで相手を威嚇する歪んだ表情が元祖であるといいます。
見知らぬ敵と対峙する際「自分より強い敵ではないか」と警戒と恐怖を感じ、牙を見せて笑っているように見える表情、これがGrimaceです。そして、出くわしたが仲間だった場合、「あなたに敵意はありません。仲良くしましょう」という意味でGrimaceはより柔らかな表情に変わります。この、恭順の意を示す表情のサインが長い年月をかけて進化し、人類にSmileとして受け継がれたのだといいます。つまり、人類のSmileの起源は「威嚇」にあった、ということです。
笑顔の起源で紹介した「敗者の笑顔」と同解釈ですね。
米カリフォルニア大学の心理学者で神経科学者、ヴィラヤヌル・S・ラマチャンドラン氏も、「笑いの表情は、威嚇の表情を緩めた形に一致している」との研究結果を発表しています。恐怖をもたらす者がいないことが判明した後の、安堵に満ちた和みの表情こそがSmileなのです。
「笑顔」と「笑い」ではやはり起源そのものが異なっているようですね。
ここで、笑顔コンサルタントの権威、門川義彦先生はどのように定義されているかみてみましょう。門川先生はこう仰っています。
笑いは「おかしい」「楽しい」など、個人的な感情が形になったものです。つまり、たった一人でも笑うことはできます。しかし、「笑顔」は他人との正常なコミュニケーションを行うための、きわめて対外的な役割を担っています。笑顔は一人ではできません。相手がいるから笑顔です。目の動物である人間は、アイコンタクトと笑顔は多くの場合セットで表現されます
出典:門川義彦 笑顔の楽校 笑いと笑顔は違うのだ
http://previous.mindia.jp/book/egao/entry/7479
門川先生は人と人との「コミュニケーション」という側面に着目しておられます。
そして笑顔を他人にむけるとき、目線だけ外している、ということは確かにありません。相手の目を見て微笑む。たとえ言葉がそこになくとも、表情と目線で気持ちが伝わるでしょう。
まとめ
笑顔と笑いは似て非なるものです。
笑顔は遠い祖先のサルでいう「威嚇」であり、恭順の意であった。笑いは「興奮・楽しさ」の表れ。
笑いは自己感情の表現であるが、笑顔は他者とのコミュニケーションの側面がある。
インターネットで笑顔について調べると、からだとこころによい効能がたくさんでてきます。しかしその定義は実は曖昧で、声を出さない「笑顔」によるものなのか「笑い」によるものなのか、はっきりと区別はされていないようです。
「快」をもとにしたものであれば笑顔も笑いも同様な効果をもたらすのか、または声を出したぶん「笑い」のほうが効果がえられるのか?
今回では明確な答えがみつけられませんでした。次の機会にはまたこちらを掘り下げようと思います。