

みなさんこんにちは。日本笑顔推進協会のライター浅井です。
今回はずばり笑顔の起源に関して調べてみました。
そもそも笑顔とはなんなのでしょうか。楽しい時、うれしい時に出る表情?改めてその起源を考えてみると単純ではないような気がします。それではまず広辞苑からいってみましょう。
「笑みを含んだ顔。わらいがお」とありました。
まさに事実ベース。しかしその先が知りたいところです。
というわけでさらに調べてみました。
人間以外に笑う動物となると、思い当たるのは人類の祖先であるサルです。サルは笑うのでしょうか?こんな記述が発見されました。
人間の笑う表情は、サルのとある2つの笑いに由来するのではないか、というものです。
ひとつは
敵意がない、と力のある個体に表明する笑顔。
相手が自分より強ければすぐに敗者の態度を示し、それ以上争いがエスカレートしないようにしているのである。笑いは敗者の表情なのだ。
出典:【「笑い」サルとの違い】
山極壽一 (京都大学教授)
恐怖、降参、といったようなネガ要素の多い表情であるとわかります。決して楽しくて笑っている訳ではなく、まるで愛想笑いのようですね。時にはその表情に怯えたような声を伴うそうです。
もうひとつは、取っ組み合って遊んでいるときなどにでる、
「噛むような仕草」に伴う笑顔。
口を開けてかむような行為をする。本気でかむわけではなく、いかにも楽しく興奮した表情だ。
出典:【「笑い」サルとの違い】
山極壽一 (京都大学教授)
ゴリラやチンパンジーなど、人に近ければ近くなるほどその表情ははっきり「笑顔」であると認識でき、時には笑い声もあげるそうです。これも特に子供が笑い声を発し、遊びが長続きするほど笑い声も絶えないのだそう。
さらにこんな仮説があります。
人間の笑いは快か不快かでわけられており、快を原因とする笑いを司るのが、視床下部(間脳)や辺縁系(大脳旧皮質)といった、系統発生的に古い脳であるのに対して、失敗した時の苦笑い、恥をかいた時の照れ笑い、秘密を隠す時の当惑した作り笑いなどは、大脳新皮質、特に前頭葉が司っている笑いであり、進化の歴史において、かなり新しく出来たものだそうです。
快を原因としないタイプの笑いは、「有害なものを吐き出す動作に由来する」という仮説がある。
口のなかにはいった有害なものを吐きだそうとするとき、哺乳動物は口を横に広げて口角をうしろへひき、歯を出し、舌を突きだす。このとき高い叫び声をあげることが多いが、それは有害なものが吸いこまれないように声門をとじ、呼吸をとめたあと、急に強く吐きだすためである。
出典:人はなぜ笑うのか 永井俊哉講義録 第160号
やはり単に楽しいから笑う、という単純なものではなかったようですね。特に興味深いのは
「敗者の表情」であるという側面です。
敵意がない、下手に争いを起こして危険にさらされたくない、という意図であるとすれば、この防衛本能からくる「笑顔」はストレスになりうるのではないでしょうか?
「微笑みうつ病」
というわけで笑顔とストレスについて調べてみると、こんな病気が見つかりました。
「微笑みうつ病」
微笑みうつ病とは、心に抑うつ症状を抱えていながら、誰かといるときは微笑みを絶やさないうつ病のことです。心配させまいという一心で必死に笑顔を作る方が多く、明らかに調子が悪そうなときでも笑顔でいることからこの名前がつけられました
出典:うつアカデミー うつ病の種類より
http://www.utsu-academy.com/kind/smile/
この病気の主な原因は仕事や人間関係からくるストレスが主な原因で、真面目で責任感が強く、体面を気にして自己犠牲をいとわないタイプがかかりやすいうつ病といわれています。体はつらく抑うつ状態であるのに、周囲にはニコニコと笑っている。いわばつくり笑顔を己に強いている状態です。
これが放っておかれるとどんどん状態は悪化し、自殺に至るケースもあるようです。
笑顔でいても容体はどんどん悪くなる。恐ろしい病気です。
つくり笑顔でも笑顔と同様に効果があるという話
表情筋の顔面フィードバック仮説
「顔面フィードバック仮説」とは、幸せそうな表情(あるいは逆に、恐怖に駆られた蓼情や嫌悪の表情)をすれば、少なくとも、ある程度は、そのとおりの気持ちになる、ということです。この考え方によると、顔(身体や声も)が脳にシグナル(フィードバック)を送り、特定の感情を経験していることを知らせて、あなたが感じるように仕向けるそうです。(ソニア・リュボミアスキー)
顔の表情筋を動かすことによって、脳にその信号がフィードバックされて気持ちにも変化が現れるだろうという仮説です。これにのっとれば、つくり笑顔も脳には「笑顔である」という信号がいき、笑顔と同様の効果をえられるはずです。
また、ストラックという心理学者は、歯でペンをくわえて漫画を読むと、唇でペンをはさんで漫画を読んだ時よりも、 はるかに楽しい気分になることを実験で証明しました。
唇でペンをはさむと、真面目な顔になりますが、歯でペンをくわえると、強制的に笑顔になりますよね。
そして、笑顔にすると、楽しい気分が増加することが分かったということです。したがって、作り笑いは楽しい気分を引き起こし本当の笑いに変わっていくということなのです。
悲しい時、つらい時ほど、
笑うといいというのは、迷信やウソではなく本当に効果があると考えてもよいようです。
しかし・・・
これらの「作り笑いもいい効果を生み出す」というのは、目の前にストレッサーがなく、ストレスにさらされていないことが条件なのではないでしょうか。
たとえばうそをついて物事を隠し通そうとするとき、上司に叱られているときなど危機的状況時に作り笑顔をしたからといって、より楽しい気分になるはずがありません。この場合にでる笑顔はあくまで「防衛本能からくるつくり笑顔」であり、それは疲労や抑うつの原因になりうると思います。
人間の作り笑いは非常に疲れる
心からの楽しさで笑っているわけではない、いわゆる「防衛のための笑顔」、ここにおいては「つくり笑顔」としましょう。これはやはり相応に労力が必要なのです。
仏教に「和顔施」(わがんせ)という言葉があります。 お金や物で人に施しができなくても、和やかな笑顔で人に接していれば、それだけで施しになるという意味です。施しになるほどですから、すてきな笑顔のはずです。すてきな笑顔を「つくり笑顔」で出すにはテクニックが必要なのです。
心からの笑顔と作り笑いは目と口に表れる!
2つの笑顔の違いは、目、口、声のトーンに表れます。
①心からの笑顔の場合
口と目が笑っている。なおかつ声のトーンが普段より高い。
②つくり笑いの場合
口だけが笑っていて、目はあまり変化がない。声のトーンもいつもと変わらない。
つくり笑いかどうかは、目、口、声のトーンの3つが一致しているかがポイントとなります。口はわりとつくり笑いがしやすいのですが、目と声のトーンを作り笑いすることは難しいのです。
まとめ
それではおさらいです。
人間の笑顔の起源には2つの側面があり、笑顔は降参の表情の意味もある。
それは現代の愛想笑いなどに通じているのではないでしょうか。
つくり笑顔で得られるとされる良い効果も、外的ストレスにさらされている状況では意味がない。
つくり笑顔は顔に出る。
接客業などで常に笑顔をつくりつづけることが苦であると感じる人は、なるべく精神面からとらえ方を変えてしまうことがよいでしょう。業務の中に己を楽しませるポイントをみつけ、「なるべく楽しむ」ことがカギです。心がついていかない笑顔は疲れるばかりだからです。またはオンオフをしっかりもって、心からの笑顔がでる時間を意識してとりいれましょう!